量子コンピューターの方式は何で分かれるのか
量子コンピューターは、計算の最小単位である量子ビットを、何を使って作るかで方式が分かれます。電気回路で作る方式、原子を捕まえて使う方式、光そのものを使う方式などがあり、どれも開発が続いていて、どの方式が主流になるかは決まっていません。この記事は、国や研究機関、各社の公式発表で確かめたことだけで、方式の違いを説明します(確認日は2026年11月3日)。
先に全体像の表を置きます。表の「確かめた最近の発表」は、方式の優劣を示すものではなく、その方式でいま何が公に発表されているかを示すものです。数字は各社・各機関が自分で公表した値で、同じ条件で比べたものではありません。
| 方式 | 量子ビットに使うもの | 動かす環境(公式の説明) | 国内の主な動き | 確かめた最近の発表 |
|---|---|---|---|---|
| 超伝導 | 超伝導の電気回路(NEC は「超伝導固体素子を用いた量子ビット」と説明) | 極低温。NEC は量子素子を10mK(ミリケルビン)程度まで冷やせる希釈冷凍機に入れると説明 | 理研・大阪大学、富士通(経産省の資料は、理研と共同で64・256量子ビット機を開発したと説明)、NEC(2023年の解説で、ムーンショット事業の超伝導量子回路の方式のプロジェクトマネージャーと説明) | 理研と大阪大学が2026年3月26日に144量子ビットの「叡-II」のクラウド提供を開始 |
| イオントラップ | 電気の力で閉じ込めた原子(イオン) | 高真空(産総研の解説は、超伝導素子やイオンは極低温や極端な真空が必要と説明) | Qubitcore(沖縄・横浜。経産省の資料は OIST 発のスタートアップと説明)。Quantinuum は日本(和光)の募集あり | Quantinuum が2025年11月5日に98量子ビットの「Helios」の商用提供を発表(同社の公表値) |
| 中性原子 | 光ピンセットで並べた原子1個1個 | 原子は極低温に冷やすが、システム全体は室温で動作(ムーンショット事業の説明) | 分子科学研究所、Yaqumo、理研 | 分子科学研究所が2026年8月24日に中性原子方式の「春海」を発表 |
| 光 | 光の量子状態 | 常温・常圧(OptQC の発表)。一部の高性能な検出器は低温が必要(産総研の解説) | OptQC、東京大学、理研、NTT、産総研 | OptQC と産総研が2026年7月21日に光量子コンピュータ1号機「MoQuren」の稼働開始を発表 |
| シリコン | シリコン半導体の素子で作る量子ビット | 2次元の量子ビットアレイや、極低温で動かす CMOS 回路を開発する(ムーンショット事業の資料)。動かす温度の説明は確かめられなかった | 日立製作所、神戸大学、東京科学大学、東京大学、理研 | 2030年までに大規模化と実験的なクラウドサービスの開始を目標にしている(資料は2025年4月時点)。経産省の資料(2026年7月8日)は、日立製作所が2030年度の1,000物理量子ビット機の実現に向けた研究開発の開始を発表したと説明 |
| 量子アニーリング | 量子ビットでイジングモデル(磁石の集まりの模型)を表し、エネルギーが最小の状態を探す | NEC は、量子コンピューターの量子素子を10mK 程度まで冷やす必要があると説明(量子コンピューター一般の説明) | NEC、東北大学(2023年に共同研究を開始)。理論は東京工業大学の西森氏と門脇氏が1998年に発表 | OR 学会の解説(2022年)は、D-Wave 社の5,760量子ビットの量子アニーラが使えると説明 |
最後の量子アニーリングだけは、汎用の計算ではなく組合せ最適化という種類の問題に絞った方式です。ほかの5つと同じ軸では並びにくいので、この記事では光量子と並べて、独立した節を立てて説明します。
この記事の表の作り方
表は各機関・各社の公式発表で作りました。あわせて、経済産業省の産業構造審議会の資料4-2「量子コンピュータ政策の今後の方向性」(2026年7月8日)と照らしました。この資料は、世界の開発の動向を超伝導・光・中性原子・イオン・シリコンの5つの方式に分けて整理し、国産の開発ベンダーとして、超伝導は富士通、光は OptQC と NTT、中性原子は Yaqumo、シリコンは日立製作所、イオントラップは Qubitcore を挙げています。この記事の方式の分け方と国内の主体は、この資料と食い違っていません。量子アニーリングは、この資料の方式の表には入っていません。
方式を比べるときの4つの物差し
「どの方式がいちばん進んでいるか」は、物差しを決めないと答えが出ません。公式の説明を読むときは、次の4つを分けて見ると、発表の意味がつかみやすくなります。
- 量子ビットの数。多いほど大きな計算ができる見込みがありますが、数だけでは足りません。
- 誤りの少なさ。量子ビットは環境の影響で壊れやすく、NEC は誤りなく制御することが難しく、誤り耐性の量子コンピューターには誤り率の低減と大幅な冗長化が要ると説明しています。たとえば Quantinuum の Helios は、2量子ビットゲートの忠実度(操作がどれだけ狙いどおりにいくか)を99.921%と同社が公表しています。
- 動かす環境。極低温の冷凍機が要るか、高真空が要るか、常温で動くか。環境は、装置の大きさ、消費電力、設置の場所に関わります。
- 大きくする道筋。量子ビットを増やすと、配線や測定器も増えます。NEC は、多ビット化の障害として、ビット数に比例して増える配線・測定器、冷凍機の容量・冷却能力、測定系の費用を挙げています(2023年6月の解説)。
たとえば、光方式は「常温で動かせる」点が目立ちますが、産総研は高性能な検出器など一部は低温が必要と書いています。中性原子方式も、原子を並べて操作する部分は極低温ですが、ムーンショット事業の説明では装置全体は室温で動くとされています。1行で「常温」「極低温」と分けられない場合があるので、表の「動かす環境」は公式の言葉のまま書いています。
量子コンピューターそのものの仕組みは量子コンピューターの仕組み、全体像は量子コンピューターとはで説明します。
超伝導・イオントラップ・中性原子・シリコン
光とアニーリング以外の4つの方式を、公式の説明で確かめたことを中心に書きます。光とアニーリングは、あとで独立した節を立てます。
超伝導方式
超伝導の電気回路を量子ビットにする方式です。NEC は自社の解説で、1999年に超伝導固体素子を用いた量子ビットの動作実証に世界で初めて成功したと説明しています。素子は10mK(約マイナス273.14度)程度まで冷やせる希釈冷凍機に入れる必要があり、冷凍機の大きさと冷却能力が多ビット化の障害になるとも説明しています。
国内では、理研と大阪大学が国産の超伝導量子コンピューターを運用しています。2026年3月26日には、144量子ビットのチップを載せた「叡-II」の量子計算クラウドサービスを始めました。前の「叡」は64量子ビットで、2台で運用することで保守や大規模な実験のときも連続してサービスを出せる、と理研は発表しています(理研のお知らせ)。同じ発表は、前の「叡」を2023年3月に導入した超伝導方式の64量子ビット機と書き、「叡-II」は配線の効率化とマイクロ波の制御装置の改良で、冷凍機を含むシステム全体を「叡」と同じくらいの大きさに収めたと説明しています。
富士通も超伝導を主力に開発していると、2026年9月の報道は伝えています。同じ報道は、同社が256量子ビット機を2025年4月に完成させたと書いています(Business Insider Japan、2026年9月9日・報道)。富士通の公式発表そのものは確認時に開けなかったので、完成の時期は当時の報道として扱います。経済産業省の資料(2026年7月8日)も、富士通を超伝導量子コンピューターの国内のトッププレイヤーと位置づけ、理研と共同で64・256量子ビット機を開発し、2030年度に1万物理量子ビットを超える機械の実現に向けた研究開発を進めていると説明しています(経産省の資料)。
この方式の採用の窓口は、当サイトでは研究機関の公募が中心です。理研には、超伝導量子エレクトロニクス研究チームの研究員の公募(求人ページ)があります。同じチームのテクニカルスタッフの公募(求人ページ)もあります。
イオントラップ方式
電気の力で真空の中に閉じ込めた原子(イオン)を量子ビットにする方式です。産総研の解説は、超伝導素子やイオンは極低温や極端な真空が必要と説明しています。
海外では Quantinuum が、2025年11月5日に98量子ビットの「Helios」の商用提供を発表しました。同社の公表値では、2量子ビットゲートの忠実度は99.921%、1量子ビットゲートは99.9975%で、クラウドとオンプレミス(利用者の施設に置く形)の両方で使えるとしています。数値はすべて同社の発表に基づきます(Quantinuum の発表)。
国内では、Qubitcore が次世代のイオントラップ量子コンピューターと光インターコネクト(光で装置どうしをつなぐ技術)を開発しています。公式の採用ページは、研究・エンジニアリングが沖縄勤務で、OIST(沖縄科学技術大学院大学)との連携による研究環境を案内しています。経済産業省の資料(2026年7月8日)は、Qubitcore を、イオントラップの技術と光量子接続を組み合わせた分散型の量子計算の仕組みを研究開発する OIST 発のスタートアップと説明しています。Quantinuum は、公式の採用ボードにある日本勤務(東京・和光)の募集を、当サイトに載せています。
この方式の募集は、AMO 物理(原子・分子・光の物理)、レーザー、真空、FPGA(制御用の回路)といった語が条件に並びます。具体的な数は、後の「方式ごとに求められる技能」の節で数えました。
中性原子方式
光ピンセット(レーザー光で原子を1個ずつつかむ技術)で並べた原子のそれぞれを、量子ビットにする方式です。ムーンショット事業の大森プロジェクトの説明では、各原子が高品質な量子ビットとして働き、システム全体は室温で動作します。同じ説明は、2028年までに量子誤り訂正の有効性を実証し、2030年までに論理量子ビットのレベルで万能ゲートセットを実現する、というマイルストーンを掲げています(JST ムーンショット目標6の大森プロジェクト)。
分子科学研究所は2026年8月24日に、中性原子方式の量子コンピューター「春海」を発表しました。初期は約50量子ビット、その後約500量子ビットまで拡大する予定です。大森ムーンショットプロジェクトとしては、最終年度の2030年度までに1万の物理量子ビットを実装することを目指すとしています。中性原子方式の特徴として、冷凍機が不要で室温で動作すること、計算の途中で原子を動かして任意の量子ビットどうしをもつれさせられることなどを挙げています。ソフトウェアの層は日立製作所、量子処理ユニットの層は米国の Infleqtion 社と共同開発したとのことです(分子科学研究所の発表)。発表は「春海」を日本初のフルスタック(利用者の入力から計算の実行・出力までの層をまとめた仕組み)の中性原子量子コンピューターとしていますが、これは分子研が2026年8月時点で国内の公表された中性原子方式を調べた結果としています。
Yaqumo は、京都大学と分子研の研究成果を基盤に2025年4月に設立された会社で、イッテルビウム原子を使う方式です。経済産業省の資料(2026年7月8日)は、Yaqumo が2027年度中にイッテルビウム原子を使った誤り耐性量子コンピューター(FTQC)の試作機の開発を目指すと説明しています。富士通が Yaqumo と組み、中性原子型の実機でソフトウェアの検証を2026年8月に始めたと、2026年9月の報道は伝えています(Business Insider Japan・報道)。
理研の量子コンピュータ研究センターにも、冷却原子量子システム研究チームがあります(理研 RQC)。このチームの研究員の公募(求人ページ)があります。同じチームのテクニカルスタッフの公募(求人ページ)もあります。
シリコン方式
シリコン半導体の素子で量子ビットを作る方式です。ムーンショット事業の日立製作所のプロジェクトの資料は、いまの量子コンピューター開発は「質」を優先して量子ビットを増やすボトムアップが主流なのに対し、このプロジェクトは、シリコン半導体の優れた集積性(均一な素子を多数載せられること)を生かして、最初から「量」を重視するトップダウンの設計を取ると説明しています。2次元の量子ビットアレイ、極低温で動く CMOS 回路などの技術を開発し、2030年までにシリコン量子コンピューターの大規模化を実現して、誤り訂正の有効性を示す実験的なクラウドサービスを始める、というマイルストーンです(JST ムーンショット目標6の資料、2025年4月時点)。参加機関は日立製作所、神戸大学、東京科学大学、東京大学、理研です。資料は量子ビットのそばで動かす制御回路を「極低温 CMOS 回路」と書いていて、極低温で動かす前提が読み取れますが、何度で動かすかの数字は確かめられませんでした。経済産業省の資料(2026年7月8日)は、日立製作所が2030年度の1,000物理量子ビット機の実現に向けた研究開発の開始を発表し、理研、ベルギーの imec、Intel と連携していると説明しています。
理研の量子コンピュータ研究センターの研究方式の一覧には、「半導体」の分類で半導体量子情報デバイスの研究チームがあります(理研 RQC)。
当サイトの掲載中の求人に、題名・仕事内容・条件へ「シリコン」の語が出てくる募集は、確かめられませんでした。この方式の募集を探すなら、日立製作所や理研などの公式の採用ページを直接見る必要があります。
量子コンピューターの求人をチェック
求人一覧を見る光量子コンピューター: 仕組み・強み・課題・国内の動き
光量子コンピューターは、光の量子状態に情報を載せて計算する方式です。国内でも産総研、理研、NTT、スタートアップの OptQC が動いています。ここでは産総研の解説(2026年6月17日)、OptQC と産総研の発表(2026年7月21日)、NTT と OptQC の発表を中心に、仕組み・強み・課題・国内の動きを順に説明します。
光量子コンピューターの仕組み
産総研の解説によると、光量子コンピューターは、光の量子状態に情報を載せ、量子もつれと測定で計算します。光で量子ビットを作る方法は、大きく2つに分けて説明されています。
- 離散変数型。光子の偏光や経路で0と1を表します。
- 連続変数(CV)型。光の強さや位相といった連続的な量に情報を書き込みます。OptQC が採用している型で、解説はアナログ型の動作だと説明しています。
OptQC が採用する連続変数型の計算の流れを、産総研の解説は次のように説明しています。
- ファイバーレーザーの光パルスを非線形光学結晶に通して、「スクイーズド光」(量子的なゆらぎを片方向に絞った光)を作ります。
- スクイーズド光どうしをビームスプリッターで干渉させ、量子もつれを作ります。
- ファイバーのループによる時間の遅れとビームスプリッターで、網目状の多体の量子状態(計算の資源)を作ります。
- この資源の一部を入力の状態とまとめて測る「ベル測定」を行うと、量子テレポーテーションを通じて、もつれの相手側の状態が操作されます。測ることで計算を進めるので「測定型量子計算」と呼ばれ、ベル測定の位相を調整して計算の内容を決めます。
- 光子を引き抜くなどして「非ガウス型状態」を作り、非線形の演算や、誤りに強い汎用の計算につなげます。
ここでは、空間を広げるのではなく、時間方向の工夫で量子もつれの規模を大きくする点が特徴です。そのため、光パルスのタイミングをそろえる同期が重要だと説明されています。
理研、東京大学、NTT、Fixstars Amplify などの共同研究グループは、2024年11月8日に光量子コンピューターを開発したと発表しました。インターネット経由のクラウドシステムから使え、当面は共同研究契約を通じた利用です。発表は、世界に先駆けた汎用型の光量子計算のプラットフォームと位置づけています(JST の発表)。
光量子方式の強み
産総研の解説と、OptQC・NTT の発表から、強みとして挙げられている点を整理します。
- 常温・常圧で動かせる。超伝導素子やイオンなどは極低温や極端な真空が必要なのに対し、光や中性原子は常温で動かせるため、低消費電力だと解説は書いています。ただし、一部の高性能な検出器は低温が必要です。
- 光通信との相性がよい。OptQC は光通信で使う波長(1545ナノメートル、約194テラヘルツ)を使います。解説は、現在の約5GHz の CPU と比べて理論上は千倍近い速度も視野に入る、将来の量子通信網とつながりやすいと期待されている、と書いています。
- コンパクトな構成で大きくできる。部品を容器に収める自由空間方式で、時間方向の工夫で規模を広げます。
- 通信の技術を応用できる。NTT と OptQC は2025年11月18日の発表で、光増幅や光多重化などの光通信技術を光量子コンピューターの開発に使うとしています。
OptQC と産総研の2026年7月21日の発表も、光方式は極低温の冷却が不要で、室温・常圧で動作し、発熱を抑えた省エネと小型化が可能で、拡張性に優れると説明しています。
光量子方式の課題
産総研の解説は、課題を3つ挙げています。
- 高性能な非線形光学素子。損失を抑えて効率よくスクイーズド光を作るため、平滑性の高い導波路などの開発が必要です。
- 処理速度の向上。検出器やホモダイン測定器の高速化が必要です。数百GHz を超えるには、入力から出力まで光だけで処理する光回路が必要になると考えられています。
- 量子誤り訂正。外部のノイズは基本的にガウス型で、誤りに強い汎用の計算には非ガウス型状態の導入が不可欠です。ただし、その生成は非常に難しいとされています。
理研、東京大学、JST は2026年2月26日に、光連続量方式の誤り耐性を理論的に示したと発表しました(理研の発表)。光に生じるノイズが空間的・時間的に強い相関を持たない限り、量子ビットの誤りとして扱え、既存の量子誤り訂正符号を組み合わせれば、ノイズが大きすぎなければ原理的には打ち消せる、と示した成果です。光のエネルギーが大きくなりすぎない設計が必要だとも明らかにしました。発表は、どのノイズをどの程度抑えれば安定して動くかという、実験に必要な指針を理論で示した点に意義があると述べています。理論で可能性が示されたことと、装置として実現することは別の段階です。
国内の会社と研究機関
国内で光量子コンピューターに取り組む主体のうち、公式の発表で確かめられたものを並べます。
| 主体 | 公式に確かめた取り組み |
|---|---|
| OptQC | 2024年9月2日設立(OptQC の発表)。経産省の資料は、東京大学の古澤研究室発のスタートアップと説明。産総研 G-QuAT に光量子コンピューター1号機「MoQuren」を設置し、稼働を2026年7月21日に発表。SDK(開発者向け実行環境)を無償で提供する予定で、企業や研究機関向けの実機計算サービスは準備段階で、開始時期は示されていない(OptQC の発表)。サイエンスポータルの2026年8月3日の報道は、年内にもクラウド経由で企業や研究機関に使ってもらう体制をつくると伝えた |
| NTT | 2025年11月に OptQC と連携協定、2026年8月3日に資本業務提携と共同研究を発表。2030年度までに誤り耐性を備えた100万量子ビット級の光量子コンピューターの実現を目指す。2028年度に1万量子ビット級の実機でユーザーとの検証(PoC)を始める計画。厚木研究開発センタに研究開発拠点を立ち上げた |
| 産総研 G-QuAT | 量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター。MoQuren は、量子・古典融合計算基盤「ABCI-Q」の構成要素につなげ、統合を進めている(OptQC の発表)。経産省の資料は、G-QuAT に GPU スパコンと、富士通・QuEra・OptQC の量子コンピューター群を置くと図示している |
| 東京大学・理研 | 古澤明教授のグループが光量子コンピューターの研究を先導し、時間方向で計算を大きくする手法を開発したと産総研の解説が説明。理研の量子コンピュータ研究センターに光量子計算研究チームと光量子制御研究チームがある |
| NICT | 量子 ICT 研究室の有期研究員の公募に、量子光の高度制御による光量子情報処理の基礎研究開発がある(求人ページ) |
NTT と OptQC の目標は、2026年8月3日の発表に書かれた計画(ロードマップ)です。2027年度までに実用的な1万量子ビット級を実現して2028年度に実機検証を始め、2030年度までに100万量子ビット級の実現を目指す、という内容で、達成を保証するものではありません。国の戦略は、令和8年度に統合と抜本的な見直しが予定されています(文部科学省「量子技術に関する政策動向」、2026年1月、資料)。国の方針に関わる記述は、見直し後に変わる可能性があります。
光量子方式の募集については、当サイトの掲載中の求人のうち、題名・仕事内容・条件に「光量子」「フォトニクス」の語が出てくるのは8件です(後の節の表)。理研の光量子制御研究チームには、光量子コンピューターの高速デジタル回路(FPGA)の設計・実装を担うテクニカルスタッフの公募(求人ページ)があります。
量子アニーリング: 仕組み・強み・課題・国内の動き
量子アニーリングは、「量子コンピューターの方式の1つ」と説明されることが多い一方、ほかの方式とは目的が違います。「量子アニーリングは量子コンピューターなのか」という疑問について、OR 学会の解説、NEC、東京工業大学の記事が何と書いているかを確かめました。
量子アニーリングの仕組み
OR 学会の解説(倉又迪哉・中田和秀、2022年6月号)は、量子アニーリングを「量子効果を用いて組合せ最適化問題を解くアルゴリズム」と説明しています。組合せ最適化問題とは、選択肢を組み合わせ、いろいろな制約を満たしながら最適な答えを探す問題です。NEC は例として、複数の都市を最小のコストで回る「巡回セールスマン問題」と、容量が決まったナップザックに総価値が最大になるよう品物を詰める「ナップザック問題」を挙げています。
解説による動きの流れはこうです。
- 最初に、量子ビットを「重ね合わせ」の状態にします。
- その重ね合わせの度合いを、時間をかけて少しずつ弱めます。
- 十分ゆっくり変化させられれば、終わったときの状態(エネルギーがいちばん低い状態)が、問題の最適解にあたります。
解説は、量子アニーリングでは四則演算や論理操作は一切行わず、最初にハードウェア上で状況設定を行うと、あとは量子力学の物理現象を利用して最適解を探す、と書いています。実際に量子アニーラ(量子アニーリングの装置)で組合せ最適化問題を解く場合は、近似解法と見るのが適切だとも書いています。
問題を装置に渡すには、問題を QUBO(二値の変数を使う2次の式)の形に書き直し、イジングモデルに変換する必要があります。NEC は、組合せ最適化問題はイジングモデルに落とし込め、最適解はイジングモデルの最小エネルギー状態に対応すると説明しています。つまり、使う人が最初に学ぶのは、問題を QUBO で書く方法です。
この考え方は、東京工業大学の西森秀稔教授と、当時の学生だった門脇正史氏が1998年に提唱しました。東京工業大学の記事(2015年4月掲載)は、巡回セールスマン問題を例に、問題を量子力学の式で表して解を求める手法で、アルゴリズムを必要とせずに解を得られる点が利点だと紹介しています(東京工業大学の記事)。
量子アニーリングの強み
公式の資料から確かめられる強みを挙げます。
- 専用の装置が実際に使える。OR 学会の解説によると、D-Wave Systems 社が2011年に世界初の量子アニーラ D-Wave One を発表し(128量子ビット)、解説が書かれた2022年の時点では5,760量子ビットの D-Wave Advantage が利用できます。NEC も2023年の解説で、協業する D-Wave 社が7,000ビット級のマシンを公開していると書いています。
- ノイズに比較的強いとされる。東京工業大学の2015年4月の記事は、ノイズに比較的強く、数千量子ビットで済むことから実用品としての普及も視野に入ってきたと紹介しています(当時の説明です)。
- 問題によっては、短い時間で近似解が出る。OR 学会の解説は、スポーツのリーグ戦の日程を組む問題(ホームとアウェイが連続する回数を最小にする問題)で、量子アニーラが0.05秒で出した答えの質に、混合整数計画ソルバー(従来の最適化ソフト)が追いつくのに、チーム数36のとき平均84.8秒かかったという実験を紹介しています。ただしこれは、量子アニーラに有利な設定の実験だと解説自身が注意しています。
- 用途の具体例が公式に出ている。D-Wave 社は、勤務スケジュール、生産スケジュール、物流のルート、リソースの最適化などを用途に挙げています(D-Wave 社の解説)。
量子アニーリングの課題
OR 学会の解説は、課題をはっきり書いています。
- 量子ビットのつながりが疎で、使える変数が少なくなる。量子アニーラの量子ビットどうしは、すべてがつながっているわけではありません。そのため、問題の1つの変数に複数の量子ビットを割り当てる「埋め込み」が要ります。たとえば、変数どうしがすべて関係する密な問題を5,760量子ビットの D-Wave Advantage に埋め込むと、使える論理変数は180個ほどに限られると、解説は書いています。さらに、制約を罰点として加える方法を使うと、5,760量子ビットを使っても、2次割当問題や巡回セールスマン問題はサイズ13程度の問題しか埋め込めないとも書いています。
- 制約の扱いが難しい。量子アニーラは、二値の制約以外の制約を含む問題を直接は解けません。制約の違反を罰点として目的関数に加える方法がよく使われますが、その分、必要な量子ビットが増えます。
- 解く問題によって結果が大きく変わる。筆者は、いろいろな組合せ最適化問題を試した結果、量子アニーラの性能は解く問題に強く依存し、スポーツの日程の問題では素晴らしい結果が出たが、巡回セールスマン問題やナップザック問題では実用的ではなかったと書いています。
- 計算時間を延ばしても、答えが良くなるとは限らない。解説によると、量子状態を保てる時間に物理的な制限があるため、量子アニーラは短い時間で近似解を得ることに限られます。混合整数計画ソルバーは、時間をかければより良い解が期待できるという違いがあります。
つまり、量子アニーリングが有利かどうかは問題の形で決まり、従来の手法を全面的に置き換えると考えるのは早いです。NEC も、量子アニーリングと、ベクトルコンピューターで動かす疑似量子アニーリング(古典コンピューターでの焼きなまし)を組み合わせて、それぞれの得意分野を生かすことを目指すと説明しています。
国内の会社と研究機関
公式の資料から確かめられた国内の動きです。
- 東京工業大学(現・東京科学大学)の西森研究室。理論を1998年に提唱しました。
- NEC。2023年6月28日の解説と発表で、超伝導パラメトロン回路を使う独自のアプローチで、従来の量子アニーリングマシンより量子状態を保てる時間(コヒーレンス時間)が長い、多ビット化しやすい構造だと説明しています。当時は8量子ビットの実証段階で、東北大学とクラウド経由で使う共同研究を始めたとしています。目標として、100ビット以上への発展を挙げていました(NEC の解説)。
- 量子アニーリングに取り組む国内の会社の募集。当サイトの掲載中の求人で、題名・仕事内容・条件に「アニーリング」「QUBO」の語が出てくるのは1件で、Quanmatic の数理最適化エンジニア(求人ページ)です。Jij と Quanmatic は、公式の採用ページで量子コンピューティングと数理最適化を柱にすると説明していますが、募集の文章にアニーリングの語が出ない求人もあります。
D-Wave 社は、現在商用で提供しているのは量子アニーリング方式で、ゲート方式は開発中であり、2026年に初期のシステムを市場に出す計画があると、自社のページで説明しています。会社自身の計画なので、達成は確かめていません。
ゲート方式と量子アニーリングは何が違うのか
ゲート方式とは、量子ゲート(量子ビットを操作する基本の操作)を順番に並べて計算する方式です。超伝導、イオントラップ、中性原子、光、シリコンの多くは、この方式の汎用の量子コンピューターを目指しています。量子アニーリングとの違いを、公式の資料が書いている範囲で表にします。
| 観点 | ゲート方式 | 量子アニーリング |
|---|---|---|
| 目指すもの | 汎用的な計算(OR 学会の解説) | 組合せ最適化に特化(OR 学会の解説、NEC) |
| 計算の進め方 | 量子論理ゲートの連続した操作でアルゴリズムを実行する回路型(D-Wave 社の説明) | 重ね合わせの度合いを時間をかけて弱め、最後の状態が最適解になる。四則演算や論理操作は行わない(OR 学会の解説) |
| 問題の書き方 | 量子回路やアルゴリズムを設計する | 問題を QUBO・イジングモデルで書く |
| 答えの性格 | 誤り耐性を実現して、正確な計算を目指す。NEC は誤り耐性の実現が不可欠と説明 | 実際には近似解法と見るのが適切(OR 学会の解説) |
| 量子ビット数の意味 | NEC の2023年の解説で400ビット級が最大規模 | NEC の2023年の解説で7,000ビット級のマシンが公開。ただし、1つの変数に複数の量子ビットを使うため、使える変数の数は量子ビット数よりずっと少ない場合がある |
| 資格の試験対策講座が挙げる出題範囲(JQCA) | 量子回路設計、量子ゲート操作、Grover・VQE・QAOA などのアルゴリズム、誤り訂正の基礎 | QUBO の定式化、量子アニーリングの原理、最適化問題のモデリング、実機とシミュレーターの使い方 |
2つの方式は、まったく別々でもありません。OR 学会の解説は、近年ノイズのある量子ゲートで組合せ最適化を解く QAOA が注目されていて、これは量子アニーリングを離散化して量子ゲートに落とし込んだアルゴリズムともいえると書いています。量子アニーリングの理論は、量子ゲートのアルゴリズムにも影響を与えています。
「量子アニーリングは量子コンピューターか」について、確かめられた範囲で答えます。OR 学会の解説は、量子アニーラを「量子アニーリング方式の量子コンピュータ」と呼び、量子コンピュータを汎用的な計算が可能なゲート方式と組合せ最適化に特化したアニーリング方式に大別しています。NEC も、量子コンピューターにはゲート方式と量子アニーリングの2つの種類があると説明しています。ただし、ゲート方式とは目指す計算の範囲が違い、誤り耐性の考え方も違います。「同じ量子コンピューター」と一括りにするより、何に使う方式かを分けて読むほうが、公式の説明に近いと言えます。
方式ごとに求められる技能: 募集要項の語を数える
方式が違うと、仕事で使う技術も違います。当サイトに掲載中の求人のうち、必須・歓迎の条件の欄がある90件について、方式の語が出てくる求人の中で、どんな語がどれだけ出てくるかを数えました。まず、方式の語が出てくる求人の数と会社・機関です。
| 方式の語 | その語が出る求人 | 会社・機関(件数) | 職種(件数) |
|---|---|---|---|
| 超伝導 | 6件 | 理化学研究所 量子コンピュータ研究センター 2件、Quantinuum 1件、産業技術総合研究所 G-QuAT 1件、情報通信研究機構(NICT) 1件、QuEL 1件 | 量子ハードウェア・装置 3件、研究職(理論・基礎・研究開発) 3件 |
| 光量子・フォトニクス | 8件 | 理化学研究所 量子コンピュータ研究センター 5件、情報通信研究機構(NICT) 2件、Qubitcore 1件 | 研究職(理論・基礎・研究開発) 6件、量子ハードウェア・装置 2件 |
| イオントラップ | 8件 | Qubitcore 4件、Yaqumo 2件、Quantinuum 1件、情報通信研究機構(NICT) 1件 | 量子ハードウェア・装置 5件、研究職(理論・基礎・研究開発) 2件、量子ソフト・アルゴリズム開発 1件 |
| 中性原子・冷却原子 | 17件 | Yaqumo 8件、理化学研究所 量子コンピュータ研究センター 4件、Nanofiber Quantum Technologies 4件、情報通信研究機構(NICT) 1件 | 研究職(理論・基礎・研究開発) 7件、量子ハードウェア・装置 6件、事業開発・営業・PM 3件、コーポレート 1件 |
| シリコン | 0件 | 該当する募集は確かめられませんでした | - |
| 量子アニーリング | 1件 | Quanmatic 1件 | 量子ソフト・アルゴリズム開発 1件 |
2026年11月5日時点で量子ジョブに掲載中の求人の集計(各社の公式の採用ページから取得)。業界全体の統計ではありません。
この表は「方式の語が、求人の題名・仕事内容・条件のどこかに出てくる」かどうかを数えたものです。1件の求人が複数の方式の語を含む場合は、重ねて数えています。会社が公式に説明している分野は、次の表のとおりです。
| 会社・機関 | 公式の採用ページや会社説明に書かれた分野 | 掲載中 |
|---|---|---|
| QunaSys | 量子コンピュータのソフトウェア・アルゴリズム(化学・材料・CAE への応用) | 14件 |
| Yaqumo | 量子コンピュータの開発(中性原子方式) | 14件 |
| Qubitcore | イオントラップ量子コンピュータの開発 | 14件 |
| Quantinuum | 量子コンピュータ(イオントラップ方式)と関連ソフトウェア | 5件 |
| 理化学研究所 量子コンピュータ研究センター | 量子コンピュータの研究(超伝導・光・冷却原子・理論など) | 11件 |
| QuEL | 量子コンピュータの制御装置・ミドルウェア | 5件 |
| Nanofiber Quantum Technologies | ナノファイバー cavity QED による量子コンピュータ・量子インターコネクト | 5件 |
| Jij | 量子コンピューティングと数理最適化のソリューション | 7件 |
| Quanmatic | 量子コンピューティング・数理最適化のソリューション | 5件 |
| Quemix | 量子アルゴリズム・量子センサの研究開発、材料計算クラウド | 4件 |
| NEC | 量子暗号通信(QKD)などの研究開発 | 1件 |
| LQUOM | 量子中継器・量子インターネットの開発 | 9件 |
| 情報通信研究機構(NICT) | 量子通信・量子暗号・量子ネットワークの研究 | 8件 |
| 産業技術総合研究所 G-QuAT | 量子・AI 融合技術のビジネス開発(研究センター) | 3件 |
| 沖縄科学技術大学院大学(OIST) | 量子物理・量子情報の研究ユニット(ポスドクなど) | 12件 |
| Quantum Zero | ダイヤモンド量子センサ | 1件 |
2026年11月5日時点で量子ジョブに掲載中の求人の集計(各社の公式の採用ページから取得)。業界全体の統計ではありません。
次に、条件の欄にどんな語が出てくるかを、方式ごとに数えます。条件の欄がない求人(28件、Jij・OIST・Quemix などの募集)は、この表から外れています。
| 必須・歓迎の欄に出てくる語 | 超伝導(6件中) | 光量子・フォトニクス(8件中) | イオントラップ(8件中) | 中性原子・冷却原子(17件中) | 条件の欄がある求人全体(90件中) |
|---|---|---|---|---|---|
| 博士号(PhD) | 4件 | 5件 | 4件 | 13件 | 33件 |
| レーザー・光学 | 1件 | 4件 | 5件 | 7件 | 23件 |
| FPGA・RFSoC(制御用の回路) | 0件 | 2件 | 1件 | 0件 | 8件 |
| プログラミング・ソフトウェア開発 | 2件 | 0件 | 1件 | 3件 | 23件 |
| 極低温・真空・クリーンルーム・微細加工 | 2件 | 0件 | 4件 | 3件 | 7件 |
| 量子誤り訂正・誤り耐性 | 1件 | 0件 | 1件 | 2件 | 7件 |
| 英語 | 1件 | 0件 | 1件 | 7件 | 18件 |
2026年11月5日時点で量子ジョブに掲載中の求人の集計(各社の公式の採用ページから取得)。業界全体の統計ではありません。
表から読み取れることを、数字を引きながら書きます。
- 条件の欄に博士号(PhD)の語が出るのは、超伝導で4/6、光量子・フォトニクスで5/8、イオントラップで4/8、中性原子・冷却原子で13/17です。研究職の募集に多い条件です。博士号を求める募集の割合は未経験から量子の仕事へで、会社・職種別に数えています。
- レーザー・光学の語は、イオントラップで5/8、中性原子・冷却原子で7/17、光量子・フォトニクスで4/8、超伝導で1/6です。いまの掲載では、原子や光を扱う3つの方式の求人のほうが、超伝導より高い割合で出ています(件数が少ないので、傾向とまでは言いません)。
- FPGA・RFSoC(制御用の回路)の語は、光量子・フォトニクスで2/8、イオントラップで1/8、超伝導で0/6、中性原子・冷却原子で0/17です。件数が少ないので、出てこない方式で不要という意味ではありません。QuEL のように、制御装置そのものを作る会社の求人もあります。
- 極低温・真空・クリーンルーム・微細加工の語は、超伝導で2/6、イオントラップで4/8です。冷やす、真空にする、微細な回路を作る、といった環境づくりの技能にあたります。
実際の募集要項から、方式と技能の対応が分かる例を挙げます。
- 中性原子方式の Yaqumo のレーザーシステムエンジニア(求人ページ)は、レーザーまたは光学システムの実務・研究経験を求めています。
- イオントラップ方式の Qubitcore のハードウェアエンジニア(求人ページ)の専門領域には、光集積・微細加工、UHV(超高真空)・極低温、FPGA・RFSoC が並びます。
- 光量子コンピューターを扱う理研の光量子制御研究チームのテクニカルスタッフ(求人ページ)は、FPGA を使ったデジタル回路の設計・実装・性能評価の実務経験を求めています。
- 超伝導の理研の超伝導量子エレクトロニクス研究チームのテクニカルスタッフ(求人ページ)は、クリーンルームでの作業経験・技術を求めています。
- 量子コンピューターの制御装置を作る QuEL のリサーチャー(求人ページ)は、超伝導量子ビットなどの複数の高度な知識と、マイクロ波や信号処理の基本知識を求めています。
数え方の注意
求人の件数が少ない方式があるので、「この方式ではこの技能が必須」とは言えません。語が出てくる件数を示しただけです。条件の欄がない求人は含めておらず、掲載しているのは公式の採用ページから取った求人だけで、方式ごとの採用の全体像ではありません。
方式ごとの募集を比べる
方式の語が出てくる求人の数は、上の表のとおりです。2026年11月5日時点で当サイトに掲載中の求人は16社・機関の118件です。職種と会社・機関の内訳は、上の表のとおりです。
題名・仕事内容・条件のどこにも、上の方式の語が出てこない求人は84件あります(職種は、研究職(理論・基礎・研究開発) 27件、事業開発・営業・PM 20件、コーポレート 15件、量子ハードウェア・装置 10件、量子ソフト・アルゴリズム開発 9件、オープンポジション(随時応募) 3件)。たとえば QuEL は、量子コンピューターの制御装置とミドルウェアを開発する会社で、公式の採用ページは、FPGA、マイクロ波制御、ソフトウェアなどの技術の結集する分野と説明しています。
職種ごとの求人はハードウェア・ソフトウェア・研究の一覧から探せます。会社ごとの説明は、Yaqumo(中性原子)、Qubitcore(イオントラップ)、理化学研究所、Quanmatic、Jij のページを開いてください。
仕事の種類全体は量子の仕事と職種、会社の一覧は量子に取り組む会社、年収は量子の仕事の年収で説明しています。
方式の違いを知って、どう使うか
方式の違いを知ると、求人の読み方が変わります。次の3つを確かめると、募集要項が読みやすくなります。
- 会社がどの方式を使うかを、公式の会社説明で確かめる。同じ「量子コンピューターの会社」でも、使う方式で必要な技能が違います。ハードウェアの募集は特に違いが出ます。
- 自分の経験に近い技能を探す。レーザー・光学、FPGA、真空・極低温、機械設計、ソフトウェア開発など、方式をまたぐ技能は多くあります。条件の欄を読むと、量子の経験を直接求めない募集があります(詳しくは未経験から量子の仕事へ)。
- 募集の時期と契約の形を見る。研究機関の公募の多くは任期付きの契約です。会社の募集は通年のものがありますが、掲載から消える(募集が終わる)こともあります。応募する前に、必ず公式の採用ページで最新の条件を確かめてください。
方式の優劣を、この記事で決めることはしません。この記事で取り上げた方式は、どれも開発が続いていて、公式の発表は将来の計画を含みます。国の戦略は令和8年度に統合・見直しの予定です(文部科学省、2026年1月)。
出典
確認日はすべて2026年11月3日です。経産省の資料は、このサイトの環境からは直接開けなかったため、同じ資料の写しで中身を確かめました。報道は「報道」と書いて日付をつけています。
- 産総研マガジン「光量子コンピューターとは?」(2026年6月17日)
- OptQC・産総研「光量子コンピュータ1号機 MoQuren の稼働開始」(2026年7月21日・OptQC の発表)
- NTT・OptQC 連携協定(2025年11月18日)、NTT・OptQC 資本業務提携(2026年8月3日)
- JST 光量子コンピューターの開発(2024年11月8日)
- 理研・東京大学・JST「光量子コンピュータの誤り耐性を理論的に証明」(2026年2月26日)
- 理研 量子コンピュータ研究センター(研究方式と研究チーム)
- 理研・大阪大学「量子コンピュータ『叡-II』の運用開始」(2026年3月26日)
- 分子科学研究所「春海」(2026年8月24日)
- JST ムーンショット目標6 中性原子型誤り耐性量子コンピュータ(大森プロジェクト)
- JST ムーンショット目標6 大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発(2025年4月時点)
- Quantinuum Helios の商用提供の発表(2025年11月5日)
- NEC「NEC の量子コンピュータ研究」(2023年6月28日)
- OR 学会「量子アニーリングと組合せ最適化」倉又迪哉・中田和秀(2022年6月号)
- 東京工業大学「「量子アニーリング」理論を応用したコンピュータが登場 — 西森秀稔」(2015年4月掲載)
- D-Wave 社 量子コンピューティングの解説
- 日本量子コンピューティング協会(JQCA)資格/認定講座
- 文部科学省「量子技術に関する政策動向について」(2026年1月)
- サイエンスポータル「商用化目指す光量子コンピューターが稼働 研究拠点で世界初」(2026年8月3日・報道)
- Business Insider Japan 富士通と Yaqumo の中性原子型の検証(2026年9月9日・報道)
- 経済産業省 産業構造審議会 資料4-2「量子コンピュータ政策の今後の方向性」(2026年7月8日)(直接は開けず、同じ資料の写しで確認)
- 各社・各機関の公式の採用ページ(当サイトの会社ページに一覧)





