この記事の数字は何か|口コミではなく公式の募集の想定年収
「量子コンピュータの仕事は年収が高い」という話は、よく聞きます。ただ、その数字がどこから来ているのかは、はっきりしないことが多いものです。この記事では、口コミや転職サイトの推定は使いません。各社と研究機関が自分の公式ページで公開している募集要項の年収だけを、会社名と公式ページの URL つきで集計します。
読むときの注意
ここで出す数字は「いま募集している求人に書かれた想定の幅」です。会社の社員の平均年収でも、業界全体の相場でもありません。求人の数は限られているので、「相場」とは呼びません。
2026年11月5日時点で、当サイトに掲載中の量子コンピューターなど量子技術の求人は118件、16の会社・機関のものです。そのうちインターンの8件は、年収の集計に入れていません。残る76件が民間企業(量子専業の会社・海外企業の日本拠点・大手企業)、34件が研究機関の公募です。
民間企業の求人76件のうち、年収の幅(下限と上限の両方)が書かれているのは35件です。残りの41件(54%)は、「公表なし」か、下限しか書かれていないものです。つまり、公式の募集要項から年収の幅が分かる求人は、民間企業の求人の46%です。この「公表なし」の割合も、年収を考えるときの大事な情報です。
集計に使った数字は、各求人のページと、下の「会社・機関ごとの表」にある公式の採用ページで確かめられます。給与の書き方は会社ごとに違います。ですから、この記事は数字を並べるだけでなく、「その数字をどう読むか」も説明します。
公式の募集に書かれた年収の幅|公表の有無と幅の分布
年収の幅が公表されている民間企業の求人35件を並べると、最も低い下限から最も高い上限までは500万円〜1,500万円です。下限の中央値と上限の中央値は600万円〜1,200万円です。中央値とは、並べたときにちょうど真ん中に来る値のことで、極端に高い求人や低い求人に引きずられにくい数字です。
幅が広い求人は、1つの募集で経験や職位の違う人を想定していることがあります(例: NEC のリサーチエンジニア(量子セキュリティ領域)は、担当レベルと主任レベルの2つの幅を書いています)。募集要項の年収は「この職種の全員がもらえる額」ではなく、「経験や職位に応じて決める範囲」と読むのが自然です。
次の表は、年収の幅を公表している求人を、幅の下限で分けた件数です。
| 募集の年収の下限 | 求人 | 割合 |
|---|---|---|
| 600万円未満 | 7件 | 20% |
| 600万円台 | 13件 | 37% |
| 700万円台 | 4件 | 11% |
| 800万円台・900万円台 | 6件 | 17% |
| 1,000万円以上 | 5件 | 14% |
2026年11月5日時点。年収の幅を公表している民間企業の求人35件を、幅の下限で分けた件数です。
幅の上限が1,000万円以上の求人は31件、1,500万円以上の求人は10件で、幅の下限が1,000万円以上の求人は5件です。公表された幅の最大の上限は1,500万円です。
数字は少数の会社に偏っている
年収の幅を公表している民間企業の求人35件は、5社のものです。年収の幅を公表した求人の数が多い上位3社(QunaSys・Yaqumo・LQUOM)だけで31件、35件の89%を占めます。ですから、この記事の中央値は、量子コンピューター業界の相場ではなく、「年収を公開しているこの5社の求人の中央値」です。
さらに、公表している35件のうち、コーポレートと事業開発・営業・PM の求人は16件(46%)です。職種ごとの公表の件数は、職種別の表のとおり偏りがあります。1社が年収の幅を変えれば、中央値も動きます。この記事が「相場」や「平均」という言葉を使わないのは、このためです。
年収の数字がない求人の割合
民間企業の求人76件のうち、年収の幅が読み取れない求人は41件(54%)です。内訳は、「公表なし」と書かれたものや年収の欄がないもの、下限だけが書かれたものです。会社の型ごとの違いは、次の「会社の型別」の表で確かめられます。
数字がない求人は、「年収が低い」と決まっているわけではありません。公式の募集要項からは、数字を書かない理由までは分かりません。応募の前に年収を知りたい場合は、後の「年収を確かめる方法」のとおり、確かめる方法があります。
職種別の年収の幅|ハードウェア・ソフト・研究・事業開発
次の表は、民間企業の求人を職種ごとに分けて、公表された年収を集計したものです。職種は当サイトの分類で、一覧のページ(職種の名前のリンク)と同じです。
| 職種 | 掲載中 | 年収の幅を公表 | 公表の幅(最小〜最大) | 下限の中央値 | 上限の中央値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 事業開発・営業・PM | 21件 | 8件 | 600万円〜1,500万円 | 1,000万円 | 1,500万円 |
| 研究職(理論・基礎・研究開発) | 15件 | 8件 | 500万円〜1,500万円 | 600万円 | 1,100万円 |
| 量子ハードウェア・装置 | 14件 | 4件 | 500万円〜1,500万円 | 550万円 | 1,200万円 |
| コーポレート | 13件 | 8件 | 500万円〜1,500万円 | 725万円 | 1,200万円 |
| 量子ソフト・アルゴリズム開発 | 10件 | 5件 | 600万円〜1,500万円 | 600万円 | 1,000万円 |
| オープンポジション(随時応募) | 3件 | 2件 | 500万円〜1,200万円 | 500万円 | 1,200万円 |
2026年11月5日時点。研究機関の公募とインターンを除く民間企業の求人の集計で、職種は当サイトの分類です。件数が少ない職種は1件の違いで数字が大きく動きます。
この表から「どの職種が高い」と順位をつけることはしません。公表している求人が少ない職種では、1件の違いで中央値が大きく動きます。また、事業開発や経営に近い求人には、責任者やリーダーの募集も含まれるため、実験を担当するハードウェアの求人と同じ土俵では比べにくいものです。
同じ職種でも、年収の書き方は会社で違います。次の表で、職種の幅が見える求人の実例を並べます。
| 求人 | 会社 | 勤務地 | 給与 |
|---|---|---|---|
| Quantum Research Scientist/リサーチ・サイエンティスト | QunaSys | 東京都文京区 | 年収600万円〜1,000万円 |
| Compiler Engineer/コンパイラ・エンジニア | QunaSys | 東京都文京区 | 年収600万円〜1,000万円 |
| 量子コンピューティング ソフトウェアエンジニア | Jij | 東京都港区 | 想定年収600万円〜1,000万円 |
| 【レーザーエンジニア】革新的な量子コンピュータの開発|京都大学発ディープテック | Yaqumo | 京都府京都市左京区 | 年収800万円〜1,500万円 |
| 【4】【Kawasaki / Japan】Optical & Laser Engineer | LQUOM | 神奈川県川崎市 | 年収500万円〜1,200万円 |
| Solution Business Lead(新規ソリューション事業企画) | QunaSys | 東京都文京区 | 年収1,000万円〜1,500万円 |
| 【フルリモート可】VP of Product(VPoP)|量子コンピュータの製品戦略・実機販売プロジェクトをリード|京都大学発ディープテック | Yaqumo | 京都府京都市左京区 | 年収1,000万円〜1,500万円 |
| 【リモート可】経営企画・コーポレート責任者|急成長企業のバックオフィス・内部統制整備|京都大学発ディープテック | Yaqumo | 京都府京都市左京区 | 年収800万円〜1,500万円 |
| [7]【1人目人事/人事責任者候補】シリーズB・大学発ディープテックスタートアップ|採用戦略・人事制度・組織づくりをリード | LQUOM | 神奈川県横浜市保土ケ谷区 | 年収600万円〜900万円 |
| リサーチエンジニア(量子セキュリティ領域) | NEC | 神奈川県川崎市(玉川事業場) | 担当レベル 年収570万〜790万円程度/主任レベル 年収680万〜930万円程度(公式の想定報酬) |
2026年11月5日時点で量子ジョブに掲載中の求人の集計(各社の公式の採用ページから取得)。業界全体の統計ではありません。年収は募集要項の想定の幅で、固定残業代を含む場合があります。
職種ごとの仕事の中身や、どんな技能が求められるかは量子コンピューターの仕事と職種で説明しています。
量子コンピューターの求人をチェック
求人一覧を見る会社の型別の年収の幅|スタートアップ・海外企業の日本拠点・大手・研究機関
会社の型で分けると、年収の書き方がはっきり違います。型は編集部の分類です。「量子専業の民間企業」は、量子技術を中心の事業にしている国内外の民間企業のうち、海外企業の日本拠点と大手企業を除いたものです。
| 会社の型 | 掲載中 | 年収の幅を公表 | 月額・下限だけ | 公表なし | 公表の幅(最小〜最大) | 下限・上限の中央値 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 量子専業の民間企業(スタートアップなど) | 70件 | 34件 | 1件 | 35件 | 500万円〜1,500万円 | 600万円〜1,200万円 |
| 海外企業の日本拠点 | 5件 | 0件 | 0件 | 5件 | 公表なし | 公表なし |
| 大手企業 | 1件 | 1件 | 0件 | 0件 | 570万円〜930万円 | 570万円〜930万円 |
| 研究機関の公募 | 34件 | 6件 | 18件 | 10件 | 450万円〜1,200万円 | 460万円〜590万円 |
2026年11月5日時点で量子ジョブに掲載中の求人の集計(各社と研究機関の公式の採用ページから取得)。業界全体の統計ではありません。インターンは入れていません。年収は募集要項の想定の幅で、固定残業代を含む場合があります。
表の「月額・下限だけ」は、年収の幅ではなく、月額や「○円以上」だけが書かれた求人です。研究機関の公募はこの形が多く、年収と同じ列に並べると誤解を招きます。ですから、研究機関の公募の行の「公表の幅」は、想定年収の幅を書いた募集だけの集計で、月額や本給だけの募集は入れていません。研究機関の書き方は、次の節で別に説明します。
海外企業の日本拠点の求人は掲載中の5件のうち、年収の幅が書かれているものは0件です。大手企業の求人は1件で、年収の幅が書かれているものは1件です。件数が少ないので、型ごとの年収の傾向は言えません。
会社・機関ごとの公表状況と公式の採用ページ
年収の幅を公表している会社・機関は、求人を掲載中の16社・機関のうち7です。会社名のリンクは当サイトの会社ページ、右端のリンクは公式の採用ページです。数字は必ず公式ページで確かめてください。
| 会社・機関 | 型 | 掲載中 | 年収の幅を公表 | 公表の幅 | 公式の採用ページ |
|---|---|---|---|---|---|
| QunaSys | 量子専業の民間企業(スタートアップなど) | 13件 | 12件 | 600万円〜1,500万円 | 公式の採用ページ |
| Yaqumo | 量子専業の民間企業(スタートアップなど) | 14件 | 11件 | 500万円〜1,500万円 | 公式の採用ページ |
| LQUOM | 量子専業の民間企業(スタートアップなど) | 9件 | 8件 | 500万円〜1,500万円 | 公式の採用ページ |
| Jij | 量子専業の民間企業(スタートアップなど) | 4件 | 3件 | 600万円〜1,200万円 | 公式の採用ページ |
| Quantinuum | 海外企業の日本拠点 | 5件 | 0件 | 公表なし | 公式の採用ページ |
| 理化学研究所 量子コンピュータ研究センター | 研究機関の公募 | 11件 | 0件 | 月額のみ | 公式の採用ページ |
| NEC | 大手企業 | 1件 | 1件 | 570万円〜930万円 | 公式の採用ページ |
| 産業技術総合研究所 G-QuAT | 研究機関の公募 | 3件 | 2件 | 600万円〜1,200万円 | 公式の採用ページ |
| 情報通信研究機構(NICT) | 研究機関の公募 | 8件 | 0件 | 月額のみ | 公式の採用ページ |
| 沖縄科学技術大学院大学(OIST) | 研究機関の公募 | 12件 | 4件 | 450万円〜590万円 | 公式の採用ページ |
| Qubitcore | 量子専業の民間企業(スタートアップなど) | 13件 | 0件 | 公表なし | 公式の採用ページ |
| QuEL | 量子専業の民間企業(スタートアップなど) | 5件 | 0件 | 公表なし | 公式の採用ページ |
| Quanmatic | 量子専業の民間企業(スタートアップなど) | 5件 | 0件 | 公表なし | 公式の採用ページ |
| Nanofiber Quantum Technologies | 量子専業の民間企業(スタートアップなど) | 3件 | 0件 | 公表なし | 公式の採用ページ |
| Quemix | 量子専業の民間企業(スタートアップなど) | 3件 | 0件 | 公表なし | 公式の採用ページ |
| Quantum Zero | 量子専業の民間企業(スタートアップなど) | 1件 | 0件 | 公表なし | 公式の採用ページ |
2026年11月5日時点で量子ジョブに掲載中の求人の集計(各社と研究機関の公式の採用ページから取得)。業界全体の統計ではありません。インターンは入れていません。年収は募集要項の想定の幅で、固定残業代を含む場合があります。
同じ会社の中でも、求人によって公表の有無が分かれる場合があります。会社が「年収を書かない方針」と決めているのかどうかは、募集要項からは分かりません。
研究機関の公募の給与の書き方|月額・本給・想定年収は混ぜない
理化学研究所、情報通信研究機構(NICT)、沖縄科学技術大学院大学(OIST)、産業技術総合研究所(G-QuAT)は、量子の研究者を公募しています。民間企業の求人と同じ「年収」で書かれていないことが多く、機関ごとに書き方も違います。次の表で整理します。
| 機関 | 公式の書き方 | 契約の形 | 年収として読めるか |
|---|---|---|---|
| 理化学研究所 量子コンピュータ研究センター(11件) | 職位ごとに、裁量労働手当と年俸月額を合わせた月額が「○円以上」。例: 上級研究員、研究員、または特別研究員募集 ナノフォトニック共振器量子電気力学研究チーム(25-3711)は「月額(公式の表記・下限)上級研究員の場合は750,000円以上、研究員の場合は650,000円以上、特別研究員の場合は500,000円以上になります。」 | 年俸制で、単年度契約の任期制。この募集は評価により2031年3月31日を上限に更新可 | 月額の下限だけ。年収は書かれていない |
| 情報通信研究機構(NICT)(8件) | 「本給」の月額の幅。例: 有期研究員|超伝導量子回路を用いたノイズ耐性量子ノード技術の研究開発は「本給 月額54.1万〜55.8万円(学歴・職務経験等で決定。年収は公表なし)」 | 採用日から2028年3月31日までで、更新の可能性あり。条件を満たせば採用日から最長5年 | 本給の月額だけ。年収は書かれていない |
| 沖縄科学技術大学院大学(OIST)(12件のうち年収の公表は4件) | 「想定年収」の幅。例: Open Postdoc Positions(Many-Body Open Quantum Systems Unit)は「想定年収460万〜590万円(公式の表記: 4.6M—5.9M JPY)」 | 2年の有期で、評価などを考慮して更新される場合がある | 年収の幅。ただし公式の給与規程に沿った想定 |
| 産業技術総合研究所 G-QuAT(3件のうち年収の公表は2件) | 「想定年収」の幅。例: 特定業務任期付職員(研究組織(G-QuAT)戦略策定及び運営業務)は「想定年収1,000万円〜1,200万円(公式の想定)」 | 任期2年。通勤手当と退職手当は別に支給 | 年収の幅(任期付職員給与規程に基づき職歴・経験などで決定) |
2026年11月5日時点で量子ジョブに掲載中の求人の集計(各社と研究機関の公式の採用ページから取得)。業界全体の統計ではありません。インターンは入れていません。年収は募集要項の想定の幅で、固定残業代を含む場合があります。
理研の月額は、同じ職位でも、募集するチームごとに違います。次の表は、理研の量子コンピュータ研究センターの3つの研究チームの募集で、公式の募集要項が示した採用時の月額(裁量労働手当と年俸月額の合計)の下限です。
| 募集(公式の募集要項) | 上級研究員 | 研究員 | 特別研究員 |
|---|---|---|---|
| ナノフォトニック共振器量子電気力学研究チーム(公式) | 750,000円以上 | 650,000円以上 | 500,000円以上 |
| 量子多体ダイナミクス研究チーム(公式) | 700,000円以上 | 550,000円以上 | 450,000円以上 |
| 超伝導量子エレクトロニクス研究チーム(公式) | 600,000円以上 | 500,000円(原文は「以上」なし) | 400,000円以上 |
2026年11月3日に各公式ページで確認。金額は募集要項の原文のとおりで、編集部の計算は含みません。
同じ職位の下限が、チームによって10万円から15万円違います。職位の名前だけで「理研の研究員の給与は○円」と決めることはできず、応募するチームの募集要項で確かめる必要があります。なお、これらは採用時の月額の下限で、給与は経験・能力・実績に応じた年俸制(固定給と変動給で構成)とされています。
見てのとおり、同じ「研究機関の公募」でも、理研は月額の下限、NICT は本給の月額、OIST と産総研は想定年収の幅です。民間企業の「年収600万円〜1,000万円」と並べて、数字の大小を比べるのは誤りです。
月額を12倍すれば年収になるかというと、そうとは限りません。たとえば NICT の公募票(2027R-60、有期研究員|超伝導量子回路を用いたノイズ耐性量子ノード技術の研究開発)の本給の下限541,000円を12倍すると6,492,000円ですが、これは本給だけの掛け算(編集部の計算)で、賞与や各種の手当は入っていません。公募票の給与の欄に賞与の記載は見当たりませんでしたが、実際の支給は機関の規程によって決まります。理研の例では、上級研究員、研究員、または特別研究員募集 ナノフォトニック共振器量子電気力学研究チーム(25-3711)の研究員の月額の下限650,000円を12倍すると7,800,000円ですが、これも「以上」の下限の掛け算(編集部の計算)です。この募集の給与は年俸制で、固定給と変動給で構成されるとされています。
任期つきの採用の読み方
研究機関の公募の多くは、有期(任期つき)の採用です。NICT の公募票(2027R-60)は、採用日から2028年3月31日までの契約で、条件を満たせば最長5年とされています。理研の募集(25-3711)は、単年度契約を評価により更新する形です。OIST のポスドクの募集(MB-OpenQS Unit)は2年の有期です。民間企業の正社員の求人とは、給与だけでなく、雇用の安定の面でも条件が違います。
研究機関の募集のうち、必須条件の欄を取得できた22件では、16件が博士号(または取得見込み・相当の学位)に触れています。給与の水準を比べる前に、自分の学位や経験が応募条件に合うかを確かめるのが先です。条件の集計は量子コンピューターの仕事と職種にまとめています。
古い「2,500万円」の話の出どころ|2021年の報道を確かめる
量子コンピューターの年収を検索すると、「年収2,500万円」「年収2,750万円」といった見出しが出てきます。これは2021年の報道に由来する数字です。出どころを、公開されている原文で確かめました。
- 日経クロステック(2021年5月11日)「年収2500万円超えも、IBMや東大が量子人材育成に注力する訳」。本文は会員向けで、読めたのは冒頭の1ページ目だけです。その範囲では、米国の IBM が2019年に、量子コンピューターの応用の研究者を25万ドル(記事の換算で約2700万円)で募集したことが紹介されています。また、情報通信研究機構(NICT)の研究者の言葉として、米国で量子事業を手がける企業とは2倍以上の給料の差があるという話が載っています。見出しの「2500万円」という数字そのものの説明は、読めた範囲にはありませんでした。
- ダイヤモンド・オンライン(2021年6月14日)「最強の理系人材「量子エリート」争奪戦が激化!“夢の計算機”を巡る企業勢力図」。全6回の連載の予告のページで、第2回(6月15日配信)の見出し「IBMは年収2750万円を提示!最強理系人材・量子エリート「給料爆騰」の舞台裏」が案内され、その紹介文で、海外では2,700万円を超す給料を提示する例も出始めたと書かれています。第2回の本文は確かめていません。
ここから読み取れるのは、次の3点です。
- 読めた範囲で示されている元の例は、米国の IBM が量子の人材に示した額(2019年の研究者の募集の25万ドルや、連載の見出しの2,750万円)で、日本の求人の年収ではありません。「2,500万円」という数字そのものの根拠は、読めた範囲では確かめられませんでした。
- これは2021年の報道で、現在の求人の相場を示すものではありません。25万ドルを円にした額は為替で変わります。
- 日経クロステックの読めた範囲では、日本と米国の給料の差が指摘されています。日本の求人が2,500万円だという話ではありません。
現在の当サイトの掲載中の求人では、民間企業の年収の幅の最大の上限は1,500万円です(例: Solution Business Lead(新規ソリューション事業企画)の「年収1,000万円〜1,500万円」)。公表された幅に2,500万円の求人は含まれていません。
ただし、当サイトが載せているのは、公式の採用ページで公開されている求人だけです。外資系の企業が非公開で出している求人や、面談で個別に決まる報酬は含まれていません。「日本で2,500万円の量子の仕事は絶対にない」とは言えません。確かなのは、公式に公開された求人の数字としては、見つからなかったということです。
年収を確かめる方法|募集要項のどこを見るか
年収の数字は、書き方によって意味が変わります。募集要項で次の6点を確かめると、比べ間違いを減らせます。
- 幅か、下限だけか。「年収600万円〜1,000万円」は幅、「800万円以上」は下限だけです。下限だけの場合、上の方は面談で決まります。
- 年収か、月額か。研究機関では月額や本給が多く、年収は別に計算が要ります。賞与や手当が入っているかは、規程で確かめます。
- 固定残業代が入っているか。月給に一定時間分の残業代が含まれる形の募集があります。
- 年俸制か、裁量労働制か。年俸制や裁量労働制の場合、残業代の扱いが月給制と違うことがあります。当サイトの民間企業の求人のうち、勤務時間の欄に「裁量労働」と書かれたものは4件です。
- 学位や経験で変わるか。下の例のように、博士の場合だけ別の額が書かれる募集があります。
- 任期はあるか。有期の採用は、年収が同じでも安定の面で違います。
| 公式の募集要項の項目(2026年11月3日に確認) | 書かれた数字 |
|---|---|
| 年収 | 600万円〜 |
| 月給 | 500,000円〜 |
| うち基本給 | 369,942円〜 |
| うち固定残業代(45時間分) | 130,058円〜 |
| 固定残業代が月給に占める割合(編集部の計算) | 約26% |
| 博士の場合の年収 | 800万円以上 |
| 直近の内定者の想定年収(30代前半・留学生・博士) | 1,200万円 |
これはLQUOM の研究開発職(メンバークラス)の公式の募集要項の数字です。同じページに、基本の「600万円〜」と、博士の場合の「800万円以上」と、直近の内定者の実例が並んでいます。公式の「年収 6,000,000円〜」を、当サイトの一覧では「想定年収600万円以上」と記録しています。上限が書かれていないため、この記事の「幅」の集計には入れていません。
見る点は2つあります。1つは、同じ求人でも学位や経験で年収が変わることです。もう1つは、月給の約4分の1が固定残業代で、これを除いた金額で他社と比べる必要があることです。
年俸制と裁量労働制の例として、Yaqumo のレーザーエンジニアの公式の募集要項には「年俸制(経験・スキルに応じて決定)」「専門業務型裁量労働制(みなし労働時間8時間/日)」と書かれていました(公式の募集要項、2026年11月3日に確認)。この場合、固定残業代のように残業が給与に含まれるかどうかは、募集要項だけでは分からないので、面接で聞くのが確実です。
面接で聞くこと
年収は、募集要項の数字だけでは決まりません。面接や面談で、次のことを聞くと、入社後の食い違いを防げます。
- 募集要項の幅の中で、自分の経験はどの位置に当たりますか。決め方の基準は何ですか。
- 提示の年収に、固定残業代や各種の手当は含まれますか。含まれる場合、時間数と金額はいくらですか。
- 賞与や、年収の見直しの時期と方法はどうなっていますか。
- 株式報酬(ストックオプションなど)はありますか。年収に含めて話していますか。
- 有期の採用の場合、更新の条件と、更新されなかった実績はどうですか。
- 勤務地や出張、リモートの扱いで、手当や費用は変わりますか。
これらは、募集要項に書かれていないことを聞く質問です。聞くこと自体は失礼にあたりません。条件をはっきりさせてから応募することを、多くの会社は前提にしています。
次に見るページ|職種別の求人と会社
年収の数字は、職種や会社ごとの求人のページで確かめられます。当サイトは、公式の採用ページから取得した求人を掲載しています。
- 量子コンピューターの求人の一覧(すべて)
- 量子ハードウェア・装置の求人、量子ソフト・アルゴリズム開発の求人、研究職の求人、事業開発・営業・PM の求人、コーポレートの求人
- 会社ごとの募集は量子コンピューターの会社(働く先として)から、各社のページへ進めます。
- 仕事の中身と求められる技能は量子コンピューターの仕事と職種で説明しています。
量子の仕事の探し方では、量子専門の紹介サービスもあります。たとえば、株式会社プロタゴニストの Quantum Plus は、量子・ディープテック分野のメディアと転職エージェントを組み合わせたサービスです(2026年11月3日に公式サイトで確認)。当サイトは、公式の採用ページに載っている求人を会社名つきで集計する点が役割で、紹介サービスなど他の探し方と併せて使えます。
出典
確認日はすべて2026年11月3日です。求人の数字は、各求人のページにある公式の採用ページを出典としています。
- LQUOM 研究開発職(メンバークラス)の募集要項(HRMOS)
- Yaqumo レーザーエンジニアの募集要項(HRMOS)
- NEC リサーチエンジニア(量子セキュリティ領域)の募集要項
- 理化学研究所 研究員の公募(量子コンピュータ研究センター)
- 情報通信研究機構 有期研究員の公募票(2027R-60)、応募方法・締切
- OIST Open Postdoc Positions(MB-OpenQS Unit)
- 産業技術総合研究所 特定業務任期付職員(G-QuAT 戦略策定及び運営業務)
- 日経クロステック「年収2500万円超えも、IBMや東大が量子人材育成に注力する訳」(2021年5月11日)
- ダイヤモンド・オンライン「最強の理系人材「量子エリート」争奪戦が激化!」(2021年6月14日)



